大好きなプロレスラーで、もっとも応援していて、彼のプロレスだけでなく本音と怨念のこもった文章に、マイクに、何度も「自分」を重ねていた。
そんな彼が、今夜、ずっと憧れて何度も何度も挑戦して届かなかったベルトを巻いた。
心底、うれしかった。
だけど。大きな歓喜に混ざるもっと大きな「驚き」に。
おれは気付かされてしまった。
おれは、まさか獲るとは思っていなかった。
おれは、これっぽちも佐藤選手のことを信じていなかった。
彼がどれほど勝ちたがっているかを知ってなお、いや知っているにも関わらず、敗ける姿を受け容れてしまっていた。確かに敗北してボロボロになっても、プロレスラーは格好いい。でもそれと、ファイターの「敗北」をどこか当たり前のこととしていること、「勝利」する姿を思い描けないで声援を送ることは違う。
「強さ」への信頼。誰よりも強くありたいというプロレスラーへ、その姿勢に憧れて自分の思いを何度も乗せたプロレスラーの「強さ」を「勝利」を信用できないで。
なにがファンだ。そう思った。
佐藤光留選手を、ずっと追いかけていたつもりだった。彼の言葉、想いを、理解しているつもりだった。
だけどやっぱりプロレスラーは凄い。おれの想像の、遥か遥か先にいつの間にか到達していた。おれは佐藤光留のことを、なんにも解っちゃいなかった。
10年プロレス観て、こんな気持になったのは初めてだ。本当にうれしい。それと同時に自分が情けない。
一番好きなプロレスラーが勝利した夜。おれはプロレスファンとして敗北したのだ。
敗けたならどうするか。這い上がるしかないだろう。
プロレスラーがそうであるように。
プロレスファンとして、いちから。